「家賃保証」? アパート経営を考える前に読んでほしい賃貸業の話



今日はちょっと、賃貸経営の話。

「30年間一括借上」「家賃保証」という言葉、アパート経営を検討したことがある人に限らず、普通にCMなんかでも見かけることありますよね。
これに関する問題が、今日の朝日新聞デジタルに出ていました。
(朝日デジタル記事:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160811-00000007-asahi-soci&pos=2
曰く、

「契約時に『30年一括借り上げ』『何もせずに安定した家賃収入』などと言われたのに途中で強引に減額された」「業者から契約解除を要求された」などの苦情が急増。

だそうで。

この仕組みについて、今日はちょっと掘り下げてみようと思います。

 サブリースってなんぞ?

「30年間一括借上」などを謳っている企業の多くは、大家から物件(アパートなど)をまるごと借り上げて、その部屋を住人(借主)に又貸ししています。こういう状態のことを転貸といって、英語でいうとsublease(サブリース)。

  1. 大家から不動産会社が借りる
  2. 不動産会社から借主が借りる

という二重構造。逆に、家賃については、

  1. 借主から不動産会社にはいる
  2. 不動産会社から大家にはいる

という二重構造になってます。大家と借主の間には直接の関係がありません。だから、空室状況に関係なく、不動産会社から大家に一定額が支払われる「家賃保証」なんてシステムが出てくるわけですね。
空室に関係なく家賃保証してもらえるなら、ローン組んでアパート建てても家賃から返済できるし、返済分を引いた残りは収入になるし、空き土地を有効活用して不労所得が入る! すごい! 
・・・と、飛びつく人が多いのでしょうね。で、問題が起きている、と。
では、どこに問題があるのでしょう?

契約の詳細説明義務がない!?

これは、今回の朝日の記事を読んで私も初めて知ったのですが、サブリース契約においては、大家と不動産会社はともに不動産事業者、つまり同業者であって、お互いある程度腹の中がわかって話しているんでしょ? という状態に置かれているんだそうです。
(ちょっと意訳かな)

例えば、個人と商品を売る側、個人と部屋を貸す側であれば、「個人」といういわば素人が騙されたり不利益を被らないように、法律が守ってくれています。商品を売る側、部屋を貸す側などは個人(=消費者)にきちんと説明をしなくてはならず、説明不足で間違った商品を売りつけられた! ということがないようになっています。

ところが、サブリース契約において、不動産会社と大家は対等の同業者
例え「大家」がただの個人で、畑やる体力もなくなったし、年金だけじゃ老後が不安だからアパートでも建てるか・・・なんて考えているおじいちゃんであろうと、「同業者」。
素人ではないので、法律で手厚く守る必要はない、と考えられていたんですね。
結果として、サブリース契約では「不動産会社から大家へのリスク説明の義務」がない、という状態で今まで来ていたんです。

義務がないわけですから、十分なリスク説明がなされないまま、「家賃が保証されるなら安心」と思ってアパートを建てた人が、後になって「家賃を減らされた」「解約された」なんてトラブルにつながっているんですね。

国土交通省が制度改正に乗り出した

大家と不動産会社は同業者。だからお互い知識に基づいて話をしてるんでしょ?
という前提で今まで来てしまった結果、さまざまなトラブルが引き起こされたことから、国交省が制度の改正を決めた、というのが冒頭の朝日デジタルのニュースでした。
引用すると、以下の通り。
国土交通省は「将来は家賃が減る可能性がある」との説明を賃貸住宅管理業者に義務づける制度改正を決めた。
 将来は家賃が減る可能性がある、とだけしか書かれていないんですが、どの程度のリスク説明を盛り込んでいるのか気になるところです。
とはいえ、例えリスクの説明をしてくれたとしても、不動産業者の営業担当者は「売る・契約する」ことが仕事です。基本的には、耳障りの良いことがインプットされるような台詞回しで説明されることになるでしょう。
もしアパート経営を検討している方がいたら、まずは業者のいうことを鵜呑みにせずに、自分の手で、自分の目で、リスクを調べてから話を聞くようにしてください。
自分(と家族)の財産を守るのは、自分ですから。

不動産会社、賃貸業にもいろいろある

最後に、我が家のケースをちらっとご紹介。
サブリース怖い、アパート経営怖い、みたいな雰囲気でここまで書いてきましたが、我が家もサブリース・賃貸業のお世話になっています。
おかげさまで、祖父の介護費用、医療費、祖母の介護費用、母の医療費など、とても年金だけじゃ賄えなかったところを賄えています。私が自分の薄給の中から出しているのは、せいぜい交通費や諸経費だけで、医療費や介護費を全部背負いこまなくて済んでいるのは、祖父が不動産賃貸をしていたおげです。

そんな中で、気づいたことをちょこっとご紹介します。
私は契約書を全部読む立場にいなかったので、雑感でしかないのですが・・・。
まさに3社3様です。ここでは事実だけ書いていますが、企業の "雰囲気" も3社3様。
もっというと、祖父が亡くなった時の対応も3社3様。丁寧にお悔やみを言ってくれたところもあれば、一言もなかったところもある。顧客満足度優先だと思う企業もあれば、あぁ、企業利益だけしか見ていないのね、と思うところもある。そんな感じです。

A社
借主と不動産会社が契約を結ぶサブリース形式。
不動産賃貸の仲介会社、不動産管理の会社、建築会社がグループ企業。
多分、「建てる」ことで儲けている。
トイレの故障や空室後のクリーニングは不動産会社(or借主)負担。
建てる前、一括借上だが、時間を経ると家賃が下がることはありうる、と説明があった。
(というか、聞いたら答えてくれた)
建物の名義人が亡くなった際、次の名義人と不動産会社の契約が終わるまでは、空室が出ても新規契約はできないと言われた。この場合、大家側の問題なので、空室分の家賃は保証されないとの説明があった。

B社
借主と大家が直接契約を結ぶ形式。不動産会社は完全に仲介のみ。
仲介料で儲けている。
不動産会社は仲介のみなので、クリーニングや故障対応は大家もち。

C社
借主と不動産会社が契約を結ぶサブリース形式。
建物の名義人が亡くなっても、空室の新規募集は問題ないと言われた。(実際、新規募集をして次の入居者が決まった)
退去時のクリーニング、エアコンの故障などすべて大家もち。空室が出ると、扉の更新だのトイレをアップグレードだの、毎回営業攻勢をかけられる。(多分、ここで儲けを出している)
建てた際にどういう説明があったかは不明だが、2年に一回家賃交渉があり、不動産会社が値引き交渉に来る。

B社はちょっと形態が違うので比較にならないけど、それにしたって、それぞれでしょう?
もし不動産賃貸をしようという気持ちがある方がいたら、ぜひ複数の企業の担当者と会って話してみてください。そしてそれぞれの評判をよくよく調べてみてください
(まぁ、ネットには悪い評判ばかりでていると思いますが)

サブリースの仕組みも企業によって違います。比べてください。
自分(と家族)の財産を守るのは、自分ですから。