福祉用具が全額自己負担に? 国の方針に疑問

みんなの介護ニュースに、こんな記事が出ていました。
要介護2以下の軽度者は福祉用具が全額自己負担に!?2018年度の介護報酬改定では、軽度要介護者への負担増案がずらり!?』
要介護者にとって欠かせないものである「福祉用具」。厚生労働省の資料によると、「福祉用具」とは、「要介護者等の日常生活の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練のための用具であって、日常生活の自立を助けるもの」と定義されています。政府、財務省は膨張する社会保障費削減を目的に、2018年からの介護保険制度を大幅に見直す予定。その骨子は、介護保険サービスの自己負担化です。
要支援1から要介護2までの「軽度者」を対象に、福祉用具貸与、特定福祉用具販売および住宅改修について、原則自己負担に切り替える方針。(引用元:要介護2以下の軽度者は福祉用具が全額自己負担に!?2018年度の介護報酬改定では、軽度要介護者への負担増案がずらり!?』

要支援1から要介護2までの方は、福祉用具貸与を原則自己負担に切り替える方針・・・
まだ元資料にあたっていないのですが、これが本当だとすると、国は全体として介護をどういう方向に持っていきたいのだろう? と疑問に感じます。

平成27年3月から、「特別養護老人ホーム(特養)」の入居は原則要介護3以上、となりました。この改定を受けて、特養待機をしていた人の中には入居要件(要介護3以上)を満たさなくなった方もいて、結果として待機者数が減るという事態につながっています。
(おかげさまで、うちの祖母の順番が回ってきたとも言える)
比較的安価な特養に入れないとなると、要介護2より下の介護度の方は、比較的高額になる「有料老人ホーム」の類に入居するか、自宅で過ごすか、という選択になります。
(関連記事:「介護が必要な人が住める場所って、なにがあるの?」)

特養の入居基準が「原則要介護3以上」となったのをうけて、私個人は政府の方針として「要介護度の低い人は自宅で過ごしましょう」ということなのだと思っていました。
3世帯同居推進なんて言葉も聞かれるようになりましたし、

祖父母は元気なうちは孫の面倒をみる。働き手は男女共に働いて日本の経済成長を牽引する。祖父母が要支援、要介護低度になった頃には孫はある程度育っているので、孫と働き手世代が協力して祖父母の面倒をみる。本当に要介護度が進んだら特養とかもあるよ。

ということが(是非はともかく)政府の目指す方向なのかな?
と、思っていたんですね。

で。
要介護度の低い人が自宅で過ごすための補助を減らすと?
こいつは一体どういう了見なんでしょう。

当たり前のことですが、人は1年ごとに歳をとってゆっくりと老いていきます。
脳梗塞や交通事故などである日突然「要介護5」、となることもありますが、多くの方はゆっくりと、少しづつ体の機能や認知の能力が衰えていき、要支援、要介護と段階を踏んでいくわけです。
要介護度の低い人が多いのは、ある意味で当たり前。
要介護度の低い人を、いかに元気に保つかというのが、本来考えるべき方向性ではないんですかね。

我が家も、祖母のために入浴補助器具を買ったり、ベッドに手すりをつけたり(レンタル)していました。ベッドに手すりがあったおかげで、祖母は自分で寝起きができましたし、入浴補助に滑り止めマットや手すりを購入したことで、転倒もせずお風呂に入れるようになりました。
これって些細なようですごく大事なことなんです。

自分で寝起きできる 

  • 介助者が不要(家族の負担が減る)
  • 自分でできることが増える(ポジティブ・アクティブになる)
  • 夜寝ているときのトイレの失敗が減る(家族の負担減&本人のメンタルにも良い)
  • 転倒防止になる(転倒事故は死亡や大怪我の元。転倒がきっかけで要介護度が一気に進行することも)

お風呂に入浴補助器具を設置

  • 転倒防止になる(上に同じ)
  • お風呂に入れるようになる(滑ったら怖い、危ない、と思うと気持ちが萎えてお風呂に入りたくないってことも。手すりなどがあることで安心して入浴できる)
  • お風呂に入って身体を清潔に保つことで、肌の疾患などが緩和される

すごーく簡単に思いつくだけ並べたものですが、ちょっとした補助具があるだけで、できることが増え、気持ちが前向きになるものなんです。

こうした福祉器具の利用料は、原則9割が保険給付対象とのこと。9割が0割になるって、かなり急激な変化ですよね。
もし自己負担になった結果として、
「お風呂の手すり、諦めよう」(お金がない)
「ベッドに手すりなんていらんよ。なんとかなる」(お金がもったいない)
という選択肢をする人が増えたら・・・結果として転倒事故やメンタルの低下につながり、要介護度の高い人が増えることになるのでは、と思います。
その方が、実は国の財政負担は増えるんじゃないのかな。


どうも、国の方針なんて大局的なものはなくて、細かいところの財政状況だけをみて、削れそうなところを削ろうという意識が見え隠れする気がしています。
それで本当にいいの?