今回の台風10号で被害に遭われた方々へ心よりお見舞い申し上げます。
私の住まい周辺は、一つ前の11号の直撃を受けて、豪雨・暴風の凄まじい状態になりました。台風直撃でも出勤させる企業はブラックだ、なんてネットで言われますが、例によって私の職場でも、普通に全員出社で仕事が行われていました・・・。
いやぁ、日本人てほんとおかしいよねー。こういう時くらい休めよって感じだよねー。
と思ったりするわけですが、今回の台風10号のニュースを見るにつけ、災害時に休んでいられない仕事について身につまされる思いがしました。
当たり前のようですが、どんなに台風がすごくて電車が運休していても、駅が無人になるわけではないですよね。電車が走っていなくても、危機管理や情報共有のために現場にいる職員がいます。
消防・警察はもちろん、自治体職員も災害時に休んでなんていられません。被害状況の把握や避難指示、やることは山積みで、しかもスピードが命です。
病院の看護師や医師も、病院を空にするわけにいかないですよね。
そして、介護職も。
台風が直撃するからといって休んでいられない仕事の一つでしょう。
改めて「介護職は台風が直撃しようと休めない仕事」なんて言われると「あたりまえだ。お年寄りを施設に残して休まれてたまるか」と思う人が多いかもしれません。かたや、「台風でも出社するとか超ブラックw」なのに。私も台風11号直撃の最中、「こんな雨風なら休みにしてくれりゃいいのに・・・帰りどうすんだよ」と思っていたわけですが。
他者の仕事への想像力が足りていないんだな、と自省した次第です。
さて、前置きが長くなりました。
今回の台風10号では、認知症の方が暮らすグループホームが浸水し、9名の方がなくなるという悲惨な被害がでました。
ニュースの第一報に触れて、他人事と思えず胸が苦しくなりました。水流に揉まれるというのは、とても体力を消耗する状態です。亡くなられた方々もお辛かっただろうと思いますし、またご家族の方や関係者の方の心痛もいかばかりでしょう。
今回の被害では、施設側や町の「認識の甘さ」が指摘されていますが、ここでは
施設を選ぶ側(要介護者の家族)として注意できる点はあるか、について考えてみようと思います。
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一般財団法人 消防防災科学センター「災害写真データベース」より
(平成21年7月中国・九州北部豪雨時の河川の様子) |
ハザードマップで施設を知る
介護施設を選ぶ際の基準は、施設の外にもたくさんあります。例えば、駅から近い、家族の家から近い、坂道じゃない、周囲が生活に便利、など。
特に、先々のことを考えて早めに高齢者向けサービス住宅などに入居を考えている方は、多くのことをご自分でされると思うので、外の環境は重要ですよね。
一方、要介護度が高く、ご自身で外出されることもほとんどないような場合、施設選びは施設の「中」に重点を置くことになります。医療スタッフがどの程度常駐しているか、夜勤は何人体制か、施設内は清潔で明るいか、お風呂には週何回入れるか、レクリエーションは週何回か、などなど。
正直、私が祖母の特養(特別養護老人ホーム)を見学に行った時も、中に関しては一生懸命話を聞いて見てきたのですが、外については「駅から遠いから会いに来るの大変かなぁ」「でも緑が多くて綺麗なとこだな」くらいしか考えていませんでした。
今思うと、緑が多い=>3面を森の斜面に囲まれている=>豪雨で斜面が崩落したら?
という見方もありますね。気になったので、市町村の公開しているハザードマップをチェックしてみました。
・・・見事に。施設の一部が「土砂災害警戒地域」に指定されています。鉄筋コンクリートの3階建てでかなりどっしりと横に長い建物の短辺側だから、いざ斜面が崩れてもそれほど大きな自体にはならないだろうけど、斜面側で就寝していたら命に関わるかも。
我が家の場合、ようやく順番が回ってきた特養ですので、ハザードマップをもとにすぐに場所を変えることは考えられません。でも、いざという時危険がある場所、と認識しておくことはとても大切だと思います。
ハザードマップが活かされなかった例も・・・
今回の台風10号で大きな被害を出した岩手県岩泉町乙茂のグループホーム周辺では、ハザードマップが作成されていなかったことがわかっています。
台風10号の影響で氾濫した岩手県岩泉町の小本川について、岩手県が、平成22年度に氾濫した場合の浸水想定区域図を作成したものの町に提供されず、住民の避難場所などを示す町の洪水ハザードマップが作られていなかったことがわかりました。県は、作成の直後に起きた東日本大震災で混乱していたため提供できなかったとしています。(NHK NEWS WEB 2016.9.1.19:33より)
平成22年の時点で、被害の出たグループホームのあった乙茂地区では最大で2メートルから5メートルの浸水が予測されていたのですが、調査直後の東日本大震災の混乱で町側に調査結果が提供されず、また震災後に川の堤防工事で堤防の高さが高くなった場所などもあり、データが古いために再調査が必要・・・ということで、ハザードマップに活かされることがなかったのだとか。
この件は、東日本大震災という未曾有の震災のこともあり、一概に「不手際」とは言えないわけですが、ハザードマップは一般市民が「土地」の状況を知ることができる貴重な資料です。データの更新、見やすさの整備、自治体にはぜひ積極的に取り組んでほしいところです。
できることは何か、考える重要性
ハザードマップで災害時の安全度合いを確認したとしても、火事や竜巻など他にも災害は色々あります。また、我が家のように、土砂災害や浸水被害の可能性がある施設でも、他に選択肢がない、ということもあるでしょう。
では、預けている側の家族ができることって具体的にどんなことがあるのでしょう?
ここまで読んでいただいて何ですが、特養や有料老人ホームに入所している場合、家族が「具体的にできること」ってほとんどないだろうと思います。例えば施設と同じ地区に住んでいる、とても近い、という場合は、避難のお手伝いなどできるかもしれませんが、遠方に住んでいると駆けつけることもままなりません。
それでも、(私自身とても耳が痛いけれど)施設任せにしない、ということが一番かな、と思います。
避難訓練は行われているの? どういう事態を想定しているの? ここの立地だと、こういう避難訓練も必要なんじゃない? いざという時、認知症や要介護の方と避難するって、どういうところが大変なんだろう?
という、疑問をもつこと。実態を知ること。自分ができることを考えること。
特養や有料老人ホームでは、入居者の家族と施設側が運営状況などを話し合う会を年に1・2回設けているところもあります。そういった場で、災害発生時の対応について聞いてみることも大切でしょう。
もしかしたら、施設運営会社はハザードマップを把握していても、個々の職員は危険を認識していないかもしれません。「ここは水害の危険地域に指定されているみたいだけど、そういう避難訓練はしていますか?」という情報発信は、無駄にはならないと思います。
また、要介護の方々を避難させる(移動させる)というのは、多大な困難が伴います。その困難さを家族が知り、イメージできるようになっておくことも、大切だと思います。言うは易し、行うは難しで、家族が口を出したところで本当の避難はとても大変なこと。
「何度も言っているのに、一向に避難訓練を行う様子がない!」なんて腹を立てるのは違います。
「まさか」という時に被害を拡大させないためにできることはないのか? 考え、話し合い、手伝えることは手伝う。これが家族ができることかな、と。
あなたはどう考えますか?