ちょっと小難しいけど、今日はこれのお話。
まず前提知識として、
身体の拘束については、厚生労働省から「身体拘束ゼロへの手引き」という手引きが作成されていて、11の行為が原則禁止されてます。
原則禁止されている身体拘束の11行為(参考:身体拘束ゼロへの手引き)
- 徘徊しないように、いすやベッドに身体を縛る
- 転落しないように、ベッドに身体を縛る
- 自分で降りられないように、ベッドの四方を柵や壁で囲む
- 点滴などのチューブを抜かないように、身体や腕を縛る
- 点滴のチューブを抜いたり皮膚をかきむしらないようにミトン型の手袋をつける
- 車いすからのずり落ち・立ち上がりを防ぐ為に、Y字ベルトや車いすテーブルをつける
- 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する
- 脱衣やおむつはずしをしないように、介護衣(つなぎ服)を着せる
- 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに身体や四肢をひも等で縛る
- 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる
- 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する
例外として、本人の命に関わる状況で他に方法がないような時、家族や本人に事情を説明して一時的に拘束する、ということは一応認められているんだけどね。
今回の調査では、病院・介護施設・サービス付き高齢者住宅などからランダムに抜いてきた調査地点にアンケート・インタビューを実施して、回答を分析してます。
上の11項目、どれもやらない、という状態を「身体拘束ゼロ」とすると、
全体で実に65.9%の期間が「身体拘束を行うことがある」という結果に。
傾向としては、病院の方が介護施設よりも身体拘束の割合が(はるかに)高い。
身体拘束を避けるための取り組みは、介護施設の方が上、という結果。
なぜ病院で身体拘束が多いのか?
ここからは、ねこる個人の体験を踏まえてちょろっと考察します。なぜ、介護施設では身体拘束をしないで済むよう工夫されている割合が高く、
病院では身体拘束する割合が高いんでしょう?
建物の構造上の違い
1つ目の理由として、介護施設と病院の構造上(建物上)の違いがあると思います。祖父がいた有料老人ホーム、祖母にお声がかかった特養:
建物の出入り口は1つ。人が常駐。鍵を開けてもらうか、開ける方法を知っていないと簡単には出られない。
エレベータなどの乗り方がわからなかったり、車椅子で自分では乗れない人が多く、特に制限をしなくてもフロアから出られない人が多い。
母が一時期入院していた一般病棟:
フロア移動も病院の出入り口もフリー。
介護施設は、認知症で徘徊癖がある人でも、どこか知らないところへ行ってしまわないような工夫がされているんですね。
一方の病院は、閉鎖病棟と呼ばれるところを除けば、外界とのアクセスはフリーです。
病気によって一時的に極度なストレスにさらされると、一時的に認知症のような症状が出ることがあります(せん妄、と言います)。
こういう時、フリーの病棟だと、気づいたら「○○さんがいない!」なんてことにもなりかねません。(ねこるの母は一度これをやったとですよ)
病院では命の危険が多い
病院は、病気の治療のためにきているわけで、医療行為が行われています。例えば「点滴を抜いてしまう」「必要なチューブを外してしまう」といった医療行為の中断が命を危険にさらす可能性もあります。
介護施設に比べて、こうした医療行為の行われている割合は当然病院の方が高いわけで、
命を守ることを優先した結果、止むを得ず一時的に体を拘束する、
という割合が病院>介護施設なのも、ある意味頷けます。
だから病院で身体拘束が多くていい、ということではもちろんないんだけども。
家族が身体拘束を受ける時のこと
我が家では、母が身体拘束を受けたことがあります。- 点滴を外さないためにミトン型手袋を使用
- 病院から出て行こうとして道路に飛び出してしまったので、夜間のみベッド下にアラームの鳴るマットを使用(これは拘束に当てはまらないのか?)
- 転落防止のため、体幹をベルトで拘束
どれも、本人の命を守るために必要な処置だったと思います。
特に、ER(救急救命室)で生きるか死ぬかって時に、ものすごい力で点滴やら人工呼吸のチューブやらなにやらを引き抜きそうになってた時は、身体拘束していなかったら死んでたんじゃないかと思ったくらいです。
(本人は、意識はなくて、おそらくただひたすら痛いか苦しいかで暴れていた)
だからね、個人的には「身体拘束、ダメ! ゼッタイ!」ていうつもりはないの。
病院(介護施設でも)などで、命の危険があって、一時的におこなわれる身体拘束は、たぶんなくならないと思うんだ。
ただし、
家族や本人への説明と、本当にそれが必要不可欠なのかの判断は必須! だよね。
家族はさ、介護や医療については素人ですよ。
それにね、やっぱり自分の家族が拘束されるとこなんて見たくないですよ。
だから家族は「ダメ!ゼッタイ!」派でいいと思うの。
家族が「本当に必要なんですか?」って病院・施設に聞けることって、大事だと思う。
やみくもに「ダメ!ゼッタイ!」て言ってしまうのも考えもので、結果として本人が亡くなったりしたら目も当てられないんだけども、
病院や施設の当たり前に対して、「本当に?」て言える存在は家族なので。
あとね、
同じ「点滴を抜かない」にしても、四肢を縛るのとミトン型手袋をするのでは、
本人の気持ちも結構違うはず。
(ミトン型手袋が身体拘束の禁止事項だってのは、実は今日初めて知ったんだけどさ!)
「本当にその方法しかないですか?」ていうのも、聞けるのは家族だよね。
不必要な身体拘束は無くなるべきだし、そのためにはやっぱり「それって必要なの?」て問えることが大切だと思うんだなぁ。
みなさんも、万が一家族のために説明を受ける側にたったら、
「そういうもんか」と思っちゃわずに、「本当に必要なの?」視点で見てみてください。
そういう積み重ねが、結果として拘束を減らすんじゃないかな、と思うねこるでした。