【小室氏 介護を言い訳】批判に物申す 介護からは逃げていい

国民的な音楽プロデューサーの小室氏が、不倫報道を受けて引退を表明してしばらくたちました。この記者会見の中で、妻・KEIKOさんに対しての介護の状況、ご本人の状況、いろんな辛い状況の吐露があったようです。
私、普段は芸能ニュースをウォッチしないので、今回の件もそんなにきちんとフォローはしていないのですが、一点どうしても気になったのでこれを書くことにしました。

「介護を言い訳にしている」という人たちの主張

今回の小室さんの記者会見を受けて、何人かの芸能人の方が「介護を言い訳にしている」という趣旨の発言をされているようです。
主な要点は、

  • 介護をして大変な人は他にもたくさんいる
  • 介護をしていることを言い訳にしたら、他の介護者に失礼だ
ということのようです。

ここで一つ区別をしておきたいことがあります。
私は、『(介護など諸々の事情で)大変だから不倫しても仕方ない』という話がしたいわけではありません。
今回の記者会見で、小室さんは『不倫そのものについては否定』しています。その上で、誤解を招く現状があったことと、そういう状態を生み出してしまった自分の置かれた環境を説明されているのです。
ですので、ここでは『不倫があったかどうか』『不倫の是非』はひとまず置いておきます。

『介護が大変なのもあって、気持ちが弱って誤解を招くような状況を生み出してしまった』ことに対して『他にも大変な介護をしている人はいるんだから、甘えたこというな』という論調が非常に問題である、と思うのです。

何が問題か?

「介護をしている人は他にもたくさんいるんだから・・・」
という発言の一字一句は追っていませんが、私にはこの発言、こう聞こえます。
「介護をしている人は他にもたくさんいて、みんな苦労しているんだから、あんたも苦労して当たり前でしょ、我慢しなさいよ

ブラック企業で鬼のような残業を「みんなやっているんだから」といってやらせるのと同じ論調です。

この発言、いかにも「他の介護をしている人たちに対して失礼だから、私が言ってやった」感があるのですが、全くの逆です。この発言が、他の介護者を追い詰めるのです。
介護をしている身でこうした発言を見聞きして思うのは、「みんな大変なんだからお前も頑張れ、我慢しろ」と言われているように感じる、ということです。

辛いことからは逃げていい


日本は、とかく「みんな頑張っているんだから」という論調が多い国です。
そうして真面目な人ほど自分を追い詰めがちです。
周りも、今回の発言者である芸能人の方も、人を追い詰めているという自覚がないんでしょうね。
でも、介護の現場は本当に体験しないとわからない辛いことで溢れているんです。心が弱るなんてもんじゃない。心が折れるの連続です。
そんな中で、「苦労している人はたくさんいる」というのは、自分を鼓舞するためならともかく、他人が言うことじゃない。
なので私としては、あえて言いたいのです。「辛いことからは逃げていい」。

もちろん、要介護者・被保護者を放置して事故があったり、死亡させてしまったりしてはいけないんですが、だからと言って自分で抱え込む必要もないんです。
公的機関を、人を、頼れるだけ頼っていいし、弱音も愚痴も吐き出していいんです。

介護は時に、「このままでは殺してしまうかもしれない・・・」というところまで介護者を追い詰めることがあります。
本当に殺してしまうくらいなら、その追い詰められた気持ちをケアマネージャーや公的幾何のの窓口に吐き出してください。
日中少しでも「完全介護」から離れられる時間を作ったり、施設に入れることを検討したり、状況を改善するためにできることはないか、一緒に考えてくれる味方を増やしましょう。

私は無責任かもしれませんが、「自分の人生の方が大事」を常に胸においています。
できる限りは母、祖母のことを優先するけれど、全てにおいて母・祖母を優先することはしません。施設や看護師さんやヘルパーさん、頼れるところは頼ります。時々ご迷惑もおかけしますが・・・

私の人生は私のもの。それを犠牲にした、といって母や祖母を恨むことはしたくないからです。

不幸は一つ

以前、「幸せの形はいくつもあるけれど、不幸は一つ。誰かより誰かの方が辛い、なんてことはないんだよ」という趣旨のセリフをどこかで見かけたことがあります。
出典を覚えていないことが悔やまれるくらい、いい言葉だと思っています。
大変なことは大変、辛いことは辛い。
人と比べることでもないし、比べて「まだまだこんなの辛くない」なんて頑張ることでもないのです。



追伸:
公的機関の窓口の方や、場合によってはケアマネージャーさんでさえ、「もっと大変な人もいるので・・・」と言ってしまうことがあります。
話を聴く立場の人は、これが相手を追い詰める可能性を少しでも胸に置いておいてください。