祖父が亡くなった後、日本年金機構から遺族年金関係の請求手続き書類が送られてきました。本来は祖母が請求すべきものだけれど、とても "認知症のおばあちゃん" に用意できるような書類じゃない・・・。というわけで手続き代行したのですが、これがもう本当に面倒で・・・。
そもそも、完全に独居のお年寄りの場合に、この手続きはどんなに大変なんだろう・・・。自分が年取って配偶者に先立たれたら、これ、できるかしら? て。
行政の方にはぜひ、自分の高齢の親御さんが一人で手続きするとしたらどんなに大変かを想像して欲しいと思います。

そんなわけで、今回の手続きを "脚が悪くて外出が億劫な86歳のおばあちゃんがやったら" を書いてみます。(私が代行した手続きを祖母がやったらこうなる、というイメージです。)

おばあちゃんが自力で手続きしたら...

書類を読むだけで大変

まずおばあちゃんは、日本年金機構から字の細かいたくさんの書類を受け取ります
老眼鏡をかけて一生懸命読んでみると、どうやら、亡くなったおじいちゃんの年金で支払われていない分(銀行口座が凍結されて支払われなかった、本来支払われる分)の請求や、遺族年金の請求ができる、という書類です。
でも、何種類も入っているし、どれに自分が該当するのかよくわかりません。

分からないおばあちゃんはまず封筒に書いてある電話番号に電話します。

祖母「どれをどうしたらいいのかわからいないんですが・・・」
年金機構「亡くなられたご主人は厚生年金でしたか? 国民年金でしたか? 云々」
祖母「国民年金でした」
年金機構「それでは、**でしたか? 〜(以下その人に応じていろいろ質問がつづく)〜」
 ・・・
年金機構「それでは、X市の役所で戸籍謄本を取り寄せていただいて、K市で住民票と所得証明を取り寄せてください。郵便でも取り寄せることが可能ですので、それぞれの市町村にお問い合わせください。その後、K市の年金事務所まで書類一式をお持ちください」
(だいたい、こういう対応をされることが多い気がします。人によりますが)

「必要な書類」の一覧の中で、いくつか丸が付いた書類があります。戸籍謄本、住民票、所得証明書、etc.  まずはこれらの書類を手に入れなくてはいけません。

書類を集めるのも大変〜その1〜

おばあちゃんの場合は本籍地と住民票住所が別市町村なので、それぞれの市町村で手続きが必要です。今の時代、わざわざ行かずとも郵便で取り寄せられるのは便利ですよね。でも、おばあちゃんには郵便で取り寄せるための書式も、先方の役所の住所も分かりません
ネットが使える世代はホームページから様式をダウンロードしたり、郵送手続きの仕方や住所を調べたりも簡単にできるのですが、アナログ生活のおばあちゃんには無理な話です。
仕方なく、おばあちゃんは最寄りの役所に行って相談することに。まず住民票と所得証明をゲットします。だいたい、役所に行って証明書を取るにも右往左往することになります。所得証明なんて取ったことないですしね。私の知る限り、多くの市町村では、ロビーで右往左往していると役所のロビー担当の方等が助け舟を出してくれます。(ところが、こうしたサポート人員が全くいない市町村もあります。この差は何なんでしょうね。)

最初の手続きで親切な方にあたると、他にどこに何を申請すればいいのかを教えてくれたりします。場合によっては、本籍地を言えば先方の窓口の電話番号や住所を調べてくれたりします。
私が実際に見かけた例では、某A市の職員さんが、A県A市の様式をコピーしてきて、市町村名をB県C市に書き換えて窓口に来た高齢男性にお渡ししていました。
「C市でも大体同じ様式のはずです。念のため、こちらにお電話していただいて、書く内容を確認してください。足りない項目があれば余白に書けば大丈夫ですから」て。
これはとても親切です。必要最低限のことを書けばすむわけだし、不備でやり直すことも減るでしょうからね。
とはいえ、職務上どうしても手続きの代行はできないので、どんなに親切でも彼等ができるのは「電話番号を調べてあげること」くらい。その先は、本人が電話や手続きをする必要があります。

次に、郵送で戸籍を取り寄せる手続きのために必要なステップが以下に続きます。
  1. 窓口に電話をする
  2. 戸籍取り寄せ申請のやり方、必要書類、送付先住所を聞く
  3. 必要事項を書いた紙を用意する
  4. 返信用封筒、切手、戸籍取り寄せ手続きに必要な郵便小為替を用意する
  5. 郵送手続き用住所に送付する
耳が少し遠いおばあちゃんにとっては、電話で必要書類を聞いてメモをするのも大変
「ゆうびんこがわせ」とか、初めて聞くような、音で聞いただけではわかりづらいものも出てきます。申請書なしに全項目を手書きしようとすると、項目数もたくさん。

さらに郵便小為替を買うために、どうしても郵便局に出向く必要がありますね。役所に出向いただけでも疲れる作業なので、今日はここで終わりにして、続きはまた明日。

書類を集めるのも大変〜その2〜

さて。今度は郵便局にいって、郵便小為替を入手します。そんでもって、郵便小為替、返信用封筒、申請書を入れた封筒を、X市に送らなくては行けません。
郵便小為替を発行してくれるのは、郵便局の「銀行業務」側、手紙を出すのは「郵便業務」側。間違えて並ぶと二度手間です。
郵便局では、結構これを間違えて待ち時間を無駄にしている方を見かけます。
初めてじゃ分からないですよね・・・。

なんとか申請書類を出せたら、あとは届くのを待つだけ。

…かと思いきや、年金機構から届いた書類の記入というのがありました。
はてさて、実はこれも結構大変なんですねー。
申請書類の一部はカーボンが挟まった複写紙です。で、この手の多くの書類がそうであるように、記入欄の文字が小さく薄いのです。複写式の記入用紙の印字が薄紫とか、薄緑でとても読みづらいのは、なぜなんでしょうね。
目が悪いととにかく読むのが辛い仕様です。記入例もあるけれど、これも字は小さめ。10 ポイント以下じゃないかな。
とにかく届いた書類3種類(加算額・加給年金額対象者不該当届・未支給年金請求書・年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付金))を全部埋めておきましょう。
年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付金)は12ページもあります。埋めなきゃいけないのは4ページですが、一仕事ですね。

年金事務所にいくのも大変

郵便で請求していた書類が無事に届きました。
記入も済んでいるし、書類も揃ったし、ようやく手続きができそうです。で、ここで年金事務所に「行く・行かない」問題が発生します。
年金の手続きも、一応郵送でできなくもない、そうです。(電話で聞いてみた)
ただし、書類不備があると出し直しになったり、どこにどういう不備があるかを説明したりというのがお互いに取って手間なので、できるだけ一式揃えて持参してください。と言われます。
年金事務所の最寄り駅を聞いて、いざ出発。窓口で書類を確認し、その場で訂正できる不備なら訂正し・・・
一回目で無事年金が手に入ればいいのだけれど、場合によっては必要書類が足りなくて出し直しなんてことも。

なぜ行政間の情報連携は進まないのか

正直、私が高齢でこれをやらにゃいかんとなったら、途中で挫折することでしょう。
ご高齢のみなさんで、ご自身で手続きされた方はどのくらいいらっしゃるんでしょう。
本来手続きされるべきで、手続きされれば支払われているべき年金のうち、実際に支払われているのはどの程度なんでしょうね。厚生労働省の年金に関わる統計調査などでは、支払われるべき年金の何割が支払われているか、ぱっと見つけることはできませんでした。
「使いやすさ」は制度運営上大事なポイントだと思うのですが、調査はされているのでしょうかねぇ?

今回、手続き代行をしながらつくづく感じたのが、行政間の連携で済む話じゃないか? ということ。
あちこちの行政(市町村役場)から複数の書類を集めて年金事務所に提出するわけですが、これをわざわざ紙と郵送で行っているわけですよね。行政間でデータをやり取りしたらもっと早いし、ユーザーの負担は減りませんか。


ちなみに、祖母の代行で年金事務所に行った際は、平日に予約をしていって、待ち時間なしでしたが、手続き時間に3時間かかりました。特にトラブルなく、順当に進めていって3時間です。窓口の人も、窓口に行く人も、苦行ですね...。